病院広報誌 WA! 第87号 2021.08.06 | 広報誌WA!

『大府市教育委員会との連携』~不登校児童生徒の支援をめぐって~

特定医療法人共和会 共和病院 名誉院長 榎本和

平成4年文科省が各市町に対し「不登校対策協議会」を設置するように通達するのに先駆け、大府市は平成2年に「不登校対策協議会」を立ち上げました。

協議会の組織は、専門医、心理士、児童相談所職員、学校関係者、教育委員会職員などで構成され実施され、私にも委員の委嘱依頼があり精神科医として参加しました。

当時は不登校児童生徒の理解について様々な見解があり、「不登校児の数を減らすこと」が目標にされがちだったので、まず委員の共通理解を図るために事例検討をする事としました。

検討が進むにつれ、「子どもの心の不調」や「学校で問題行動を起こす子ども」の現場での対応や理解について検討することが必要と考えられるようになりました。

各小・中学校で巡回事例検討会が開催されるようになり、助言者として事業当初からかかわっておられた(現)中京大学現代社会学部教授 辻井正次先生と手分けして参加しました。

その経過で他の学校での取り組みを共有できたらとの声があがり、当時の教育長にお願いし、教育委員会のバックアップのもと、平成6年度には自主的な事例検討会を開催する事になり、後に述べるレインボーのスクールカウンセラーも全員、助言者として参加しています。

30年近くたった現在も継続して開催され、小中学校の教師(125名登録)、保育士、適応指導教室職員が参加し、困難な事例の対応について毎回検討しています。

最近は不登校事例も多様化しており、「発達が個性的な子ども」、経済的問題あるいは虐待など「家庭に困難がある」と思われる事例などもあり、地域の関係機関との連携が求められています。大府市は「子ども精神保健」に関して他の市町にはない取り組みをしています。

その一端として市独自に不登校児童生徒が通う適応指導教室(レインボーハウス)に週5日、辻井先生はじめ経験のある臨床心理士5人を配置し相談を受けています。

相談の結果、医療が必要とされた場合は当院をはじめとする児童発達外来に受診してもらい、診察し、必要に応じてカウンセリングや発達作業療法など行なっています。

子どもの「心の不調」について専門医療機関はどこも相談の枠が少なく予約待ちとなっている現状を考える時、住んでいる地域でタイムリーに相談ができることは親や子どもたちにとって安心につながります。

当院として、これからも大府市の子どもの支援をめぐって、学校現場の先生、教育委員会はじめ子ども未来課など関係機関との連携を深め、この地域の子どもの精神保健に寄与できたらと思います。

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